2000年3月下旬にアメリカのカリフォルニア州にあるSan Joseに行った。当時はドットコムバブルと呼ばれた一時代の終焉の時期だったと思う。でもSan Joseで僕の周りにいた人はIT系の仕事をしている人ばかりだった。それは今も変わっていないと思う。

iBook Special Edition
アメリカに行く前に日本でAppleのiBookを買った。僕は以前からコンピュータを持つならAppleと決めていた。「何がしたい」とかまったく考えていなかったけど、「インターネットにつながるコンピュータ」を持てば何かおもしろいと漠然と思っていた。
アメリカに住み始めた最初の3ヶ月間で、人生に必要なネットサーフィン時間を超えたと思うほど大量の時間をコンピュータの前で過ごした。僕は当時、San Joseにある語学学校に通い英語を勉強していた。授業は朝の9時頃から16時くらいまでだったと思う。授業後はクラスメイトと映画を観に行ったり、パーティーしたり、普通に本屋(Barns&Noble)で過ごすことが多かった。夜は外出しない時は自宅でインターネットをしていた。

Barns & Boble at Stevens Creek Blvd
インターネットを使い始めた初期、僕は片っ端から世界のニュースサイトをブックマークしていった。その次は情報データベースだった。映画、音楽といったカテゴリでも写真や動画はなく、基本テキスト情報ばかりだったけど、インターネットに広がる情報の海のダイビングに没頭していた。そして一通りブックマークできたと思ったら、次にmp3をダウンロードするようになった。

napster
Napsterのmac版を使って音楽データベースでアーティスト名や曲名をひたすら検索して、検索結果にひっかかったmp3を片っ端からダウンロードしていった。ロックが好きでいろいろなジャンルのロック(例えばヘビメタ、デスメタル、ハードコア、グランジ)に興味があったので、カテゴリやジャンルの派生を調べるのにインターネット上の情報データベースが便利だった。つまりハイパーリンク。
使用していたインターネット回線は、光ファイバーでも、ADSLでも、ISDNでもなく、アナログ回線だった。mp3一曲(約3〜5MBほど)をダウンロードするのに何十分もかかった。当時はiTunesもなかったので(iTunesがMacintosh用OSで使えるようになったのは2001年1月)、ネット上で無料公開されていたmp3視聴用の無料ソフトを使っていた。
インターネット回線の速度が遅いということは、使った時間に対して表示される情報量が少ない。つまり現在と比べいかに大量の時間を「待ち時間」として費やしていたことがわかる。待ち時間で何をしていたのかと言うと、予め画面に表示させておいたウェブサイトを読んだり、町田康の小説を読んでいた。ちなみに町田康は当時から自分のウェブサイトを持ち新作情報や日記を投稿していた。たまに「ほぼ日刊イトイ新聞」を読むこともあった。
当時mp3で聞いていたアーティストで、今でも聞いているアーティストはあまりいない。思い浮かぶのはDAFT PUNKのHomeworkやDJ ShadowのEntroducingと言ったアルバム。mp3を聞いて気に入ったアルバムはTower RecordsやAmeba Recordで買っていた。またBarns&Nobleに併設されていたCDショップで視聴して気に入ったアルバムを買うことが多かった。そういえば、当時はアマゾンで書籍やCDを購入することに対して積極的ではなかった。実物を手に取ってから購入することが多かった。(今ではiTuneストアで1曲単位でmp3データを購入するようになった。)

DAFT by daftpunk in 1999
検索サービスは何を使っていたかと言うとYahoo!を使っていた。

Yahoo Logo
2000年6月下旬にGoogleの検索がYahoo!に採用されるようになってGoogleは知名度を一気に上げたが、2000年前半はまだ検索=Yahoo!だった。でもYahoo!は当時も今もただの電話帳だった。僕はより深く、濃い情報に興味があったので(あくまでも主観的で相対的な見方だけど)、そのような情報は電話帳には載っていなかった。幸いインターネットに詳しい人が周りいたり、僕自身も時間を持て余しネットサーフィンに時間を費やすことができたので、それらの人に情報検索のこつを教えてもらったり、自分でやり方を覚えた。
最近「価値」について考えさせられる機会が多い。人が価値を感じることのできる情報。人が価値を感じお金を払ってくれる情報・サービス・商品。情報収集型ではこれは成し遂げることはできない。少なくとも、2000年4月時点で僕は何も生み出していない。生み出したのはたくさんの情報をサーフィンすることで感じた疲労感と整理されていない情報のパズルとカオス。正直に言うと、そこで何かを生み出したいとは考えていなかった。だから、インターネット上で掲示板に書き込みをすることもなく、ひたすら情報を収集していた。